家出から始まった、社会課題への目覚め。非行少年がAPU国際経営学部で見つけた「循環型ビジネス」の夢

「人生を変えたのは、一杯の水だった」——立命館アジア太平洋大学(APU)国際経営学部に合格した青年は、そう振り返ります。かつて家出を繰り返し、学校にも行かない日々を過ごしていた彼が、なぜ今、「地域発・循環型ビジネス」という壮大な構想を掲げるようになったのか。ウォーターエイド・スピーカーとしての登壇、ラオスでのボランティア、ガーナの青年海外協力隊との出会い——複数の「気づき」の瞬間が、迷いの中にいた少年を、社会変革の担い手へと導きました。

「気づき」は行動の起点である

人生が大きく動き始めたのは、ウォーターエイド・スピーカーとしての活動がきっかけでした。

北九州市のSDGsの授業に登壇し、水・衛生問題を児童の生活に引き寄せて伝える中で、彼は一つの確信を持ちました。

「気づき」は行動の起点である。

家出を繰り返していた頃、自分も誰かの「気づき」が必要だったのではないか。そして今、児童たちが水問題に「気づく」ことで、彼らの人生が変わるかもしれない。その可能性を目の当たりにしたのです。

同時に、社会課題に対しては、制度と仕組みによって持続可能な支援の構造を整える必要があることにも気づきました。単なる「援助」では、問題の根本解決にはならない。その想いが、やがて「循環型ビジネス」というテーマへと繋がっていくのです。

「援助では足りない」——ラオスの現実が教えたもの

この気づきが現実となったのが、ラオス・シェンクワンでの衛生ボランティアでした。

汚れた水や未整備のトイレにより病気が蔓延し、就学困難や医療負担が連鎖する現状。その場面を前にした時、彼は痛感しました。

単なる援助では限界がある。

「子どもたちが学校に行けないのは、病気が蔓延しているから。医療費の負担が大きいから。つまり、根本的には『経済的な自立』がないからなんだ」

彼がラオスで目撃したのは、支援に依存する構造の限界でした。そして、その限界を乗り越えるために必要なのが、「地域の資源と人材を活かし、継続的に価値を生み出すビジネスモデル」だったのです。

識字教育や技能育成によって地域の労働力を高める。地場資源を活かした商品を開発する。それを国際市場で展開して得た収益を教育やインフラに再投資する。

この循環こそが、本当の意味での「自立」を生み出すのではないか——彼はそう確信するようになりました。

ガーナでの青年海外協力隊との出会いが、確信を与えてくれた

この構想に確信を与えてくれたのが、青年海外協力隊としてガーナで活動した武部寛則氏との出会いでした。

村に深く入り、住民の生活と意識に変化を起こした彼のように、自分も現場に根ざしながら、国際経営の知見をもって構造的な変革を起こせる人材を目指したい。

その想いが、APU国際経営学部への志望を確固たるものにしたのです。

多文化環境こそが、自分が必要とする学びの場

かつて学校に行かず、家出を繰り返していた少年。その彼が今、なぜAPUを志望するのか。

その理由は、「多国籍な学びの環境」にありました。

「国内外での異文化交流や実地活動を通じて、柔軟なコミュニケーション力と国際感覚を培ってきた。英語での発信にも積極的に取り組んでおり、すでに『国際的な視点で考え、行動する力』を身につけつつある」

非行の時代から、今この瞬間まで。その変化の過程の中で、彼は気づいてもいました。自分が変わるために必要なのは「多様な視点」だということに。

そして、その多様な視点を最も実践的に学べるのが、APUの多文化環境だったのです。

ゴメズ・オスカル准教授のゼミで、「人間の安全保障」を学ぶ

志望理由書では、特にゴメズ・オスカル准教授のゼミへの強い関心を示しました。

人間の安全保障や非西洋的国際協力論に基づき、ソーシャルビジネスと地域共生の在り方を学べる環境。それは、彼の「循環型ビジネス構想」を学問的に深める場だったのです。

実際に合格した志望理由書の一部(志望動機)

私が目指すのは、衛生・教育・経済を統合した「地域発・循環型ビジネス」を構築し、人々が自らの手で未来を切り拓ける仕組みを創出することです。ラオスでのボランティアを通じて、単なる援助では限界があることを痛感しました。支援に依存するのではなく、現地の資源と人材を活かし、継続的に価値を生み出すビジネスモデルを構築したい。その実現のため、実践的かつ多国籍な学びを提供するAPU国際経営学部での学びを志望します。

「自分を見放さなかった場所」が、未来を作る

かつて家出を繰り返していた彼が、APU国際経営学部に合格できたのは、決して「優秀だったから」ではありません。むしろ、その反対です。

彼は、自分が学校に行かなかった日々の中でも、「自分を見放さなかった場所」の存在に気づきました。ウォーターエイド・スピーカーの機会をくれた人。ラオスへのボランティアを可能にした環境。ガーナの協力隊の話を聞く場所。

これらは全て、「彼が非行少年だったから」与えられたものではなく、「彼が社会課題に向き合おうとしたから」与えられたものです。

つまり、彼が学んだのは、こういうことなのです。

人生を変えるのは「完璧な過去」ではなく、「今、本気で何に向き合うか」だということ。家出から始まった人生だって、ラオスの子どもたちの笑顔に出会うことで、全く違う意味を持つようになる。自分がかつて「誰かの気づきを必要としていた」という経験は、今、自分が児童たちに「気づき」を与える時、最強の武器になるということ。

家出を経験した彼だからこそ、「支援に依存する構造の限界」が痛いほど理解できます。自分が誰かに「与えられる」ばかりではなく、自分自身で「生み出す」必要があることを、身をもって知っているのです。

だからこそ、彼がAPUで学ぶ「循環型ビジネス」は、単なる経営論ではなく、自分の人生そのものを変えた「循環」の仕組みを、世界中の人々にも届けたいという、誰にも負けない覚悟になったのです。

あなたが過去に何をしたか。そんなことは、もう関係ない。大切なのは、今から何をするか。そして、その「今」の行動が、あなたの人生を、そして世界を、どう変えるか——それだけです。