「運動神経が良いだけじゃ、良い体育教師になれない」父の授業とパラスポーツが教えてくれた、本当の"インクルーシブ体育"。立命館合格ストーリー

立命館大学スポーツ健康科学部に総合型選抜で合格した、西山巧真くん

運動神経が良いだけでは、良い体育教師になれない。その気づきが彼を変えた

小さい頃から運動が得意だった西山くんは、体育の授業や部活動で友達にアドバイスをするのが自然なことでした。何でも器用にこなせたからこそ、「教えること」にやりがいを感じていたといいます。わかりやすく丁寧に見本を見せたり、練習方法を工夫したり、積極的に仲間の成長をサポートしてきました。

しかし、ある時重要なことに気づきました。彼のアドバイスが響くのは、スポーツが得意な子や運動が好きな子だけだということに。経験者や上手な子には熱心に教えるのに、運動が苦手な子には教えるのを諦めていました。そして、体育の授業が初心者の子や苦手な子のスポーツ嫌いを助長している現実に直面したのです。

父の授業が教えてくれた、本当の体育教育

体育教師でもあり部活動の顧問でもある父親に相談し、授業風景を動画で見せてもらった西山くん。そこで見たものは、彼の想像とは全く違うものでした。体育授業では、生徒たちみんながとても楽しく活動に取り組んでいたのです。

部活動では厳しく指導している場面もありましたが、一人ひとりの技術や能力によって成長を促す指導をしていました。そして、みんなにチャンスの機会を与え、努力し続ける環境をつくっていました。

両方に共通していたのが、場面や状況ごとにルールややり方を変えていたことでした。バレーボールでいうとワンバウンドOKにしたり、コートの大きさやネットの高さを変えたりしていました。父親は「結果よりも諦めさせないことや楽しくやることにモットーをおいている」と話してくれたといいます。

勝利至上主義のスポーツの世界で自己を磨いてきた西山くんにとっては、衝撃的な光景でした。高校で初めて「努力が報われない」という経験をしたことも、彼の教育観を形成する重要な要素となりました。経験値の少なさや身体的能力により活動や可能性を決めつけずに、一人ひとりの成長に目を向けた指導ができる教師になりたいと強く思うようになったのです。

パラスポーツとの出会いが、教師像を明確にした

西山くんの転機となったのは、パラスポーツアスリートと共に、パラリンピックの意義を多様な目線から議論した経験です。勝敗に偏らず、スポーツの本質的な楽しさを誰もが体感できる可能性を強く感じたといいます。

実際、ドイツではパラスポーツがクラブ活動で普及しています。この事実を知り、彼は体育の授業にパラスポーツを組み込んだ授業を実践できる教師になりたいと考えるようになりました。パラスポーツの最たる魅力は、健常者も一緒に楽しめ、身体的特徴や有利性の壁をなくし、スタートラインを揃えることができる点です。西山くんは「インクルーシブ体育」の実現を目指しています。

実践を通して見えてきた、教育の可能性

想いを形にするため、西山くんは複数の活動に挑戦しました。ガーデンスポーツ学童に参加し、一人ひとりのニーズにあわせて体育授業や遊びを通してコミュニケーションをとりました。子どもたちの反応を直接見ることで、個別対応の重要性を実感したといいます。

さらに印象的だったのは、自ら立ち上げた「パラスポーツを通じた地域共生プロジェクト」です。柳昂志元全日本代表選手やひょうごシッティングバレーボール協会の協力のもと、「シッティングバレーボールの体験&大会」を企画・運営しました。調整は大変でしたが、仲間や地域の協力で乗り越えることができました。高校生が主体となってこのような大規模なプロジェクトを成功させたことは、彼のリーダーシップと実行力を示しています。

また、奈良県三宅町での「課題解決×行政体験プログラム」にも参加しました。森田浩司町長との対話では、地域課題に向き合い、地方創生のリアルを学びました。子育て支援施設や交流拠点「MiiMo」などを視察し、現場の人と全国各地の中高生の声をもとに課題や可能性を探りました。調査・対話・提案までを一貫して行うことで、社会に向けて考えを形にする力をつけることができたのです。

志望理由書で伝えた、体育教育改革への想い

西山くんの志望理由書では、JA共済の調査データを効果的に活用し、現状の課題を明確に示しました。小学生の約2割、中学生の約4割が体育を「嫌い」と答えている現実。心身の成長や進学に伴い「体育嫌い」がより顕著になることや、部活動の地域移行などスポーツに触れ合える機会の減少が、体育授業の重要性を一層高めています。

人生100年時代において健康寿命の延伸が叫ばれる中、生涯にわたって適度な運動やスポーツに取り組む「生涯スポーツ」の重要性が訴えられています。一時的なスポーツ運動ではなく、生涯スポーツを好きになったり楽しめることが健康にもつながります。

だからこそ、これからの体育には「選択」という考え方を持ち込むとうまくいくと彼は主張しました。その際、「何を選択肢として示すか」と「何を評価するか」が指導のポイントとなります。この具体的な提案が、立命館大学の評価を得たポイントの一つでしょう。

立命館大学で実現したいこと

志望理由書では、立命館大学スポーツ健康科学部で学びたい理由を明確に述べました。スポーツ科学の知識と教育学の実践を統合的に学べる環境に強い魅力を感じたといいます。

特に、大友智教授のスポーツ教育学・体育科教育学の指導と、永浜明子教授のインクルーシブ体育・アダプテッド体育の研究を深く学び、理論と実践の両輪を強化していきたいと述べました。さらにスポーツコーチング論を修得することで、学校内だけにとどまらず地域のスポーツ企画・指導にも関わり、地域創生のできる体育教師になるという明確なビジョンを示しました。

合格の鍵となったポイント

西山くんの合格には、いくつかの重要な要素がありました。

第一に、「運動が得意」という強みを持ちながら、そこに安住せず「運動が苦手な子」の視点に立てたことです。自分の経験を批判的に振り返り、課題を発見する力が評価されたと言えます。

第二に、複数の実践活動を通じて、想いを形にした点です。ガーデンスポーツ学童への参加、シッティングバレーボール大会の主催、行政体験プログラムへの参加など、多様な経験を積み重ねました。特に、高校生が主体となってパラスポーツイベントを企画・運営した実績は、強いアピールポイントになったはずです。

第三に、データに基づいた現状分析と、具体的な解決策の提示です。JA共済の調査データを活用し、「選択」という新しい体育のあり方を提案した点は、論理的思考力の高さを示しています。

第四に、立命館大学での学びと自分の目標を明確に結びつけた点です。特定の教授の研究内容まで調べ、それが自分の目標実現にどう役立つかを具体的に説明できたことが、大学への本気度を伝えることにつながりました。

西山くんが目指す教師像

西山くんの将来像は明確です。生徒一人ひとりの個性と可能性を尊重し、身体と心の両面から成長を支える「共に学び、共に育つ」教師。単に知識や技術を教えるだけでなく、生徒の内面に寄り添い、主体的な学びを促す伴走者になることを目指しています。

そして、学校内だけにとどまらず、スポーツ嫌いをなくし誰一人として排除されない教育環境を作ることに社会貢献したいと考えています。将来的には、子どもだけではなく障害者、高齢者まで多様な人たちとスポーツを通して「共に学び、共に育つ」場をつくっていく教師像を描いています。

総合型選抜で大切なこと

西山くんの合格事例から学べることは多くあります。評定3.5という決して突出した成績ではありませんでしたが、自分の経験を深く振り返り、そこから見出した課題と解決策を明確に示すことができました。

運動が得意だったからこそ見えなかった課題に気づき、それを解決したいという強い想いが原動力となりました。そして、その想いを実践活動という形で示し、さらに大学での学びと将来のビジョンを明確に結びつけることができました。

総合型選抜では、「あなたの想い」と「行動」、そして「伝える力」が評価されます。西山くんの事例は、まさにこの3つの要素が揃った好例と言えるでしょう。自分が何を実現したいのか、なぜその大学・学部でなければならないのかを明確にすることが、合格への第一歩となります!