「震災で薬が届かない。それなら私が届ける」福島の現実とファストドクターへの提案が、薬剤師への道を拓いた。昭和薬科大学合格ストーリー

昭和薬科大学薬学部に総合型選抜で合格した、丸山樹乃さん
福島で知った、災害時の薬不足という現実
丸山さんが薬剤師を志したきっかけは、リザプロの課外活動で高校2年時に福島で災害下の医療支援を学んだことでした。福島県双葉町を訪れ、被災地の復興の実態を調査する中で、東日本大震災では医療従事者が半数以下に減り、薬などの物資が不足して患者が十分な治療を受けられない状況があったことを知りました。
特に印象深かったのは、福島県立医科大学の坪倉教授の講義で震災時の災害医療の現状と課題を学んだことです。薬の不足が医療の継続を難しくする現状に気づき、薬剤師の役割の重要性を実感しました。医師や看護師だけでなく、薬剤師という存在が災害時の医療を支える重要な役割を担っていることを知り、将来の目標として考えるようになったのです。
ファストドクターへの提案—SWOT分析から生まれた多言語支援システム
福島での経験を経て、丸山さんは薬の提供における課題に目を向け、2つの活動を行いました。
1つ目は、遠隔診療を得意とするファストドクター株式会社から地域医療の現状と課題について対談したことです。多文化共生の進行により、外国人労働者の増加によるコミュニケーションの困難さや支援体制の不十分さなどの問題が生じていることを学びました。
丸山さんは、ファストドクターの仕組みをSWOT分析し、訪日外国人患者への医療支援をテーマに、多言語対応のAIを活用した病名予測や症状説明チャット、インターナショナルクリニックへの自動予約などのシステムを提案しました。高校生という立場でありながら、企業の仕組みを分析し、具体的な解決策を提案したことは、彼女の問題解決能力の高さを示しています。
NPO法人への提案—薬剤師と共同で考案した服薬支援システム
2つ目は、薬剤師の方と共同し、薬の写真を撮ると情報が多言語表示され、服薬スケジュールを管理したり、緊急時に薬剤師にチャットで相談できる機能が備わっている支援システムを考案した経験です。
外国人に対してのリスクは、十分な合意形成が取れず、薬の効果や副作用を外国語で説明するという点にあります。丸山さんは、薬の情報を多言語で表示する機能や服薬管理機能、薬剤師とのチャット相談機能を備えた提案書を作成し、特定非営利活動法人に送付してフィードバックを受けました。
薬剤師の方と協働した活動を通して、医療を提供する側の視点に立ち、受け手側の事情に応じた支援の方法を考える重要性に気づきました。また、個人的な事情に応えられるよう、医療チームと連携して、最善の治療を支えられる臨床薬剤師として貢献したいと考えるようになったのです。
昭和薬科大学で実現したい学び
丸山さんは、患者一人一人の背景を理解し寄り添いながら、安全で的確な薬物療法を提案できる臨床薬剤師を目指しています。そのためには、多職種連携や国際医療支援が充実した昭和薬科大学で、実践的な知識や現場での対応力を身につける必要があると考えています。
昭和薬科大学では、多様な価値観を持つ患者に対して、独自性のある支援を届けるための研究を行える環境があります。まず、肥田典子教授や向後麻里教授のもとで、臨床現場で薬剤師が文化や言語の壁を越えて服薬支援を行うための病院特有の具体的な工夫を深く学びたいと考えています。
「海外における薬剤師の役割を知る」授業では、日本と海外の薬剤師の働き方や患者とのコミュニケーション、医療制度の違いを理解し、国際的な視野から日本の医療の在り方を見つめ直す力を養いたいとしています。「個別化医療」の授業を通じて、最適な治療を考える力を養いたいとも述べています。
さらに、「学部連携TBL実習」を通して、チーム医療における本質を理解し、外国人や他文化出身の人たちにとっても迅速に安心を提供できるようにしたいと考えています。
合格の鍵となったポイント
丸山さんの合格には、いくつかの重要な要素がありました。
第一に、福島での被災地調査という具体的な原体験を持っている点です。福島県双葉町を訪れ、坪倉教授の講義で災害医療を学んだ経験が、薬剤師を志す明確な動機となっています。単に「医療に興味がある」という抽象的な動機ではなく、「震災時に薬が不足して患者が十分な治療を受けられなかった」という具体的な課題から出発しています。
第二に、ファストドクター株式会社という実在の企業に対してSWOT分析を行い、具体的な解決策を提案した点です。多言語対応AIによる病名予測、症状説明チャット、インターナショナルクリニックへの自動予約という3つの機能を組み合わせたシステムは、現実的で実現可能性の高い提案です。
第三に、薬剤師と協働してNPO法人に提案書を送付し、フィードバックを得た点です。高校生が一人で考えるだけでなく、実際の薬剤師と協働し、NPO法人という第三者の評価を得たことが、提案の質の高さを証明しています。
第四に、「医療を提供する側の視点」と「受け手側の事情」の両方を理解した点です。薬剤師と協働した経験を通じて、提供者側の課題と患者側のニーズの両方を考える視点を獲得しました。この両面からの理解が、臨床薬剤師としての資質を示しています。
第五に、昭和薬科大学の具体的な教授名や講義名を調べ上げた点です。肥田典子教授、向後麻里教授、「海外における薬剤師の役割を知る」「個別化医療」「学部連携TBL実習」という具体的な学びの場を示し、それが自分の目標実現にどう役立つかを明確に説明しました。

福島で感じた使命感が、外国人患者への支援へとつながった
丸山さんの物語には、一貫した「薬による支援」というテーマがあります。福島で知った震災時の薬不足という課題が、外国人患者への薬の情報提供という新たな課題へとつながっています。
災害時であれ、言語の壁があるときであれ、患者が必要な薬を適切に使用できない状況は同じです。丸山さんは、この共通点を見抜き、ファストドクターへの提案とNPO法人への提案という2つの具体的なアクションを起こしました。
SWOT分析という経営学の手法を用いて企業の仕組みを分析し、AIやチャット機能という最新技術を活用した解決策を提案する。薬剤師と協働してNPO法人にフィードバックを求める。これらの行動は、高校生という枠を超えた実践力を示しています。
昭和薬科大学で肥田教授や向後教授のもとで学び、「海外における薬剤師の役割を知る」授業で国際的な視野を広げ、「学部連携TBL実習」でチーム医療を実践的に理解する。丸山さんの学びの計画は、福島での原体験と外国人患者への支援という2つの経験を統合し、「どんな患者に対しても文化的背景や言語の違いを超えて安心と信頼を持って薬物療法を支えられる臨床薬剤師」という明確な将来像へとつながっています。
震災という困難な状況でも、言語の壁という障壁があっても、すべての患者に適切な薬が届くように。丸山さんの想いは、昭和薬科大学での学びを経て、いつか多くの患者の命と健康を支える力へと成長していくでしょう。
