「小4の多摩川研究が、ダムの堆砂問題につながった」福島と能登で水害を学び、密度流排砂という答えに辿り着いた。都立大合格ストーリー

東京都立大学都市環境学部都市基盤環境学科に総合型選抜で合格した、武直輝くん

小学生の頃の多摩川研究が、河川への興味の原点だった

武くんは、ダムに堆積する砂である堆砂によるダムの機能低下という差し迫った課題を、持続可能な排砂方法で解決したいと考えています。この強い決意のもと、東京都立大学都市環境学部都市基盤環境学科への入学を果たしました。

彼が河川に興味を持ったきっかけは、小学4年生の時に実施した多摩川の橋についての研究でした。幼い頃から河川に関心を持ち、調査を重ねる中で、洪水発生数が増える日本において、貯水量の減少を招く貯水池の堆砂問題は致命的だと考えるようになりました。留学も経験し、大学入学後の研究テーマへとつながっていったのです。

福島と能登半島での現地調査が、水害対策への関心を深めた

武くんは高校2年時に学校で行われていたゼミ活動で「教会を通した学童保育と地方創生」をテーマに研究を行いました。この研究を通して地域の課題を解決する方法を考え抜いた経験から、将来的には都市の抱える課題について取り組みたいと考えるようになりました。

また、高校1年生で福島を訪れて現地の方にインタビューを行い、高校3年生では昨年豪雨に襲われた能登半島の役所の方にオンラインでお話を聞いた経験から、水害対策に強い関心を持つようになりました。福島や能登半島での現地調査を通して、水害対策の重要性を肌で感じ、将来は都市の安全を守る土木分野に携わりたいとの思いを強くしたのです。

そして、その関心を深く掘り下げる中で、武くんは日本の河川が抱える重大な問題、ダムの堆砂問題に直面しました。

データに基づいた課題認識が、研究テーマを明確にした

近年、土木業界の若者離れにも関わらず、環境問題によって土木業界に求められる仕事が増加しています。その一例として洪水に対応するためのダムの建設、改修が挙げられます。国土交通省のデータによると、地球温暖化による気温上昇によって、今後指数関数的に洪水の発生回数が増加していくと予想されています。その洪水の対策として一翼を担っているのがダムです。

しかし、そのダムが現在洪水に対応できなくなる危機に瀕しています。その原因は、ダムに堆積する砂、堆砂です。ダムは河川において重要な部分であり、非常に堅牢に設計されています。しかし、河川の中にある以上、ダムには河川の上流から流れて来た砂が溜まり続けてしまいます。それにより、ダムの総貯水量が減少することで、洪水に対応するためのダムが洪水に対応できなくなってしまうのです。

既存の排砂方法の限界を分析

その対策のために国土交通省が様々な方法を打ち出しています。例えば、ダムの貯水域の範囲を広める「掘削」や中に溜まった砂を上から取り除く「浚渫」、山の中に砂の通り道を作る「排砂バイパス」や水を利用して内部の堆砂を押し流す「フラッシュ」等の方法も導入されています。

しかし、武くんはこれらの方法の限界を明確に分析しました。掘削や浚渫は人員不足や費用対効果の問題等によって困難になりつつあります。排砂バイパスやフラッシュは効率的で人の手が必要ないものの、一つのダムに対して多大な費用を要します。しかし、小規模のダムが多数ある日本においては費用対効果が認められず、公共事業であるダムの工事を行うことができないという現実があります。

これらの理由から、人間が手を加えずとも排砂を行ってくれるダムを作ることが急務となっています。

密度流を用いた持続可能な排砂方法に着目

そこで、武くんが着目しているのが密度流を用いた排砂方法です。この方法では、ダム内部での水の流れを把握することで上流から流れてくる砂をそのまま下流に流すことができます。この方法を取ることができれば、人間が手を加えなくても砂が流れていき、一度だけ内部の堆砂を浚渫等の方法で取り去ってしまえば、その後はダムが自動で排砂を行ってくれるようになり、そのダムにおける堆砂問題は解決するのです。

この密度流を用いた排砂方法は、人手不足と費用対効果という日本の土木業界が抱える二つの課題を同時に解決できる可能性を秘めています。

東京都立大学で実現したい学び

武くんは、貯水池における堆砂問題の解決に貢献したいと考え、東京都立大学を志望しました。横山勝英教授のもとで水理学、特に貯水池内部での水の動きについて深く学び、その学びを生かしてどのようにして貯水池に流れ込んでくる砂を効率的に排出するのかについて研究したいと考えています。

都市が抱える課題、特に水害対策という観点から、ダムの堆砂問題の解決に貢献したいという明確な目標を持っています。そして、この研究を通して、日本の河川インフラが直面する課題を解決し、将来の都市の安全に貢献したいと強く願っています。

合格の鍵となったポイント

武くんの合格には、いくつかの重要な要素がありました。

第一に、小学4年生の頃から一貫して河川に関心を持ち続けた点です。多摩川の橋についての研究から始まり、高校での地方創生の研究、福島と能登半島での現地調査へと発展させました。一貫したテーマへの関心が、志望理由書に説得力を持たせました。

第二に、複数の現地調査を実施した点です。福島での現地インタビュー、能登半島の役所の方へのオンライン取材。これらの活動を通じて、水害対策の重要性を肌で感じ、それを言語化できました。机上の学習だけでなく、現場の声を聞く姿勢が評価されました。

第三に、国土交通省のデータに基づいた課題認識を示した点です。「地球温暖化による気温上昇によって、今後指数関数的に洪水の発生回数が増加していく」という具体的なデータを示し、課題の深刻さを客観的に説明できました。

第四に、既存の排砂方法の限界を詳細に分析した点です。掘削、浚渫、排砂バイパス、フラッシュという四つの方法について、それぞれの利点と限界を明確に説明しました。この分析があるからこそ、密度流を用いた新しい排砂方法の必要性が説得力を持ちました。

第五に、具体的な教授名を挙げて学習計画を示した点です。横山勝英教授の水理学研究という具体的な学びの場を調べ上げ、自分の研究テーマとどう結びつくかを明確に説明できました。

小学生の探究心が、日本の河川インフラを救う研究者への道を開いた

武くんの物語は、小学4年生の多摩川研究から始まりました。多くの子どもたちが一時的な興味で終わらせてしまう自由研究を、彼は10年近く追い続けました。その探究心が、高校での地方創生研究、福島と能登半島という被災地での現地調査へと発展し、最終的にはダムの堆砂問題という日本の河川インフラが抱える本質的な課題にたどり着いたのです。

密度流を用いた排砂方法という、人手不足と費用対効果の両方を解決できる可能性を秘めた研究テーマ。これは、武くんが小学生の頃から河川を見つめ続け、現地で水害の実態を学び、データに基づいて課題を分析してきたからこそ見出せたテーマです。

東京都立大学での学びを通じて、武くんは「堆砂問題を抱えることのない持続可能で永く使うことのできるダム」を考案できる人材へと成長していくでしょう。小学生の頃の純粋な探究心が、いつか日本中のダムを救う技術革新へとつながる日が来るかもしれません。武くんの挑戦は、まだ始まったばかりです。