早稲田大学で9月に入学できる英語学位プログラムは6つあります。ただし、日本の高校に通う生徒がそのまま出願できるのは、そのうち一部だけです。

基幹理工学部と創造理工学部の英語学位プログラムは、日本の教育課程を修了した人は出願できません。文化構想学部のJCulPも、日本の高校生向けの入試は4月入学です。「9月入学=帰国生だけのもの」でも「英語ができれば誰でも受けられるもの」でもない。この線引きを最初に押さえないと、準備の方向を誤ります。

この記事は、推薦入試の指導現場から見て「自分はどのプログラムに、どの区分で出せるのか」を起点に、6プログラムを横断で比較します。

早稲田大学の「9月入学」総合型選抜とは?6つの英語学位プログラムの全体像

早稲田大学の9月入学は、英語で授業を受けて学位を取る「英語学位プログラム」の入試です。対象は政経・社学・国際教養・文化構想・基幹理工・創造理工の6学部。選考は書類審査が中心で、一般選抜のような学力試験はありません。

「9月入学」と「英語学位プログラム」の関係

9月入学は、英語学位プログラムに入るための入口です。

海外の高校は6月前後に卒業する国が多く、4月入学だと半年以上の空白が生まれます。9月入学はそのズレを埋めるための制度です。社学のTAISIも、海外で6月に卒業した受験生が帰国後すぐ入学できる日程を組んでいます。

そのため出願者の中心は海外の高校やインターナショナルスクールの出身者です。ただし、後述するように日本の高校生でも出願できるプログラムはあります。

6プログラムで学べる分野と取得できる学位

学部・プログラム

主な学問領域

入学時期

国際教養学部(SILS)

リベラルアーツ全般

9月/4月

政治経済学部 英語学位プログラム(EDP)

政治学・経済学・国際政治経済学

9月

社会科学部 TAISI

社会科学の学際的研究

9月

文化構想学部 国際日本文化論プログラム(JCulP)

日本文化研究

9月/4月

基幹理工学部 英語学位プログラム

数学、情報・通信

9月

創造理工学部 英語学位プログラム

機械工学、社会環境工学

9月

出典:早稲田大学 入学センター。政経は政治学・経済学・国際政治経済学の3つの学士課程があり、出願時にどれか1つを選びます。

名称の注意点を一つ。政経の英語学位プログラムは、旧称の「EDESSA」で検索されることがあります。過去の教員公募資料ではEDESSAという名称が使われていましたが、現在の公式サイトではEnglish-based Degree Programと表記されています。本記事では以下「EDP」と呼びます。

先進理工学部の英語学位プログラムは募集停止です。古い記事で先進理工を含む「7学部」と書かれていたら、情報が更新されていないサインです。

4月入学の総合型選抜(SILS国内選考・JCulP日本学生入試)との違い

SILSとJCulPには、日本の高校生向けの4月入学方式があります。違いは入学時期だけではありません。

SILSの4月入学・国内選考は、書類審査に加えてCritical Writing(120分)と日本語の志望理由エッセイ(30分)の筆記審査があります。9月入学は書類審査が中心で、筆記試験はありません。「当日の筆記で勝負する4月」と「出願書類で勝負が決まる9月」は、評価の重心がまったく違う入試です。

4月入学を併設しているのはSILSとJCulPの2つだけで、残る4プログラムは9月入学のみです。

【比較表】6プログラムの募集人員・出願時期・選考方法

出願時期は、どのプログラムも1月から2月に集中します。選考は書類審査が軸で、面接は大学から指定された人だけが受ける形が基本です。

募集人員と入学時期の一覧

プログラム

募集人員

主な選考方法

SILS(9月入学)

150名

書類審査(必要に応じて面接)

政経EDP

約100名

書類審査(必要に応じて面接)

社学TAISI

約60名

書類審査(必要に応じて面接)

JCulP(海外学生入試・9月)

15名

書類審査(必要に応じて面接)

基幹理工 英語学位

30名

書類審査(必要に応じて面接)

創造理工 英語学位

30名

書類審査(必要に応じて面接)

出典:早稲田大学 国際アドミッションズ・オフィス FAQ、各学部の2027年9月入学募集要項。SILSはこのほかに4月入学(国外選考)100名、JCulPは4月入学の日本学生入試15名を募集します。

出願〜合格発表のスケジュール(2027年9月入学)

2027年9月入学の要項は2026年9月末から10月初めにかけて各学部で公開され、日程は次のとおりです。

プログラム

出願期間

面接(必要な場合)

合格発表

SILS

Early:1月7日〜12日/Regular:1月13日〜28日

3月26日または27日

Early:3月9日

政経EDP

1月7日〜28日

4月16日または17日

4月22日

社学TAISI

第1回:1月7日〜12日/第2回:1月13日〜28日/第3回:4月28日〜5月6日(実施しない場合あり)

第1回:2月13・14日/第2回:4月3・4日

第1回:3月5日/第2回:4月14日/第3回:6月11日

JCulP(海外学生)

1月7日〜28日

4月7日〜9日

4月15日

基幹・創造理工

1月7日〜28日

4月17日または18日

4月23日(繰り上げ合格は5月24日)

出典:SILS、政経、社学TAISI募集要項、JCulP募集要項、理工。入学日はいずれも2027年9月21日です。

出願の受付開始は、全プログラムで1月7日にそろっています。年末年始をはさむため、学校に発行を頼む書類は12月のうちに手元にそろえてください。TAISIの第1回とSILSのEarlyは締切が1月12日で、他より2週間早く閉まります。

選考方法は「書類審査+必要に応じた面接」が基本

面接に呼ばれないことは、不合格を意味しません。

政経EDPで面接に進むのは大学が指定した受験生のみで、面接に呼ばれなくても不合格が決まったわけではないと説明されています。SILSの9月入学は、合格しても面接がないことが特徴として挙げられています。出願した時点で、評価材料の大半は出そろっている。これが9月入学の最大の特徴です。

出願の入口は1月7日にそろいますが、結果が出るのは3月上旬から4月下旬まで幅があります。他大学との併願では、この発表順を前提に手続きの締切を並べておきましょう。

出願資格|日本の高校生が出願できるプログラム・できないプログラム

日本の高校を卒業(見込み)の生徒が9月入学で出願できるのは、SILS・政経EDP・社学TAISIの3つです。理工系2学部は出願できず、JCulPは4月入学の日本学生入試が受け皿になります。

日本の高校卒業(見込み)者が出願できるプログラム

入学センターは、英語学位プログラムの入試を2つのタイプに分けています。

政経の英語学位プログラム、社学TAISI、SILSの9月入学は、日本国内と日本国外の中等教育機関の修了者を同じ定員枠で募集する学部です。日本の高校生も出願できますが、海外出身者と同じ土俵で比べられるということです。

SILSの9月入学には国内・国外といった区分がなく、出願資格があれば誰でも出願できます。ただし受験生の大半は国外で教育を受けた人です。

社学TAISIは公式FAQで、日本の高校に通う生徒も国籍や教育背景を問わず出願できると明言しています。留学生と日本人学生のどちらかを有利に扱うことはなく、書類全体で判断するとも書いています(TAISI Admissions FAQ)。

海外課程修了者向けのプログラム(理工・JCulP海外学生入試)

基幹理工と創造理工は、日本国外の中等教育機関の修了者を募集するための定員枠を設けている学部です。さらに理工系の英語学位プログラムは、日本の教育課程を卒業・修了した人は出願できません。

日本の高校から理工の英語学位に出すことはできません。

JCulPは区分が二つに分かれます。日本の学校の卒業者は「日本学生」、海外の学校の卒業者は「海外学生」の区分で出願し、日本学生は4月入学、海外学生は9月入学です。日本の高校生がJCulPを目指すなら、9月入学ではなく4月入学の日本学生入試(JS入試)を準備することになります。

帰国生・IB生・インター生はどの区分で出すべきか

ここは判断を誤りやすいポイントです。

在籍校のタイプ

出願できる9月入学プログラム

日本の高校(一条校)

SILS・政経EDP・社学TAISI

日本国内のインター(認定校)

6プログラムすべてが対象になり得る

海外の高校

6プログラムすべてが対象になり得る

一条校でIBDP取得予定

プログラムにより区分が変わるため要項で確認

SILSについては、12年間の中等・高等教育を修了していれば、どの国で学んでいても国外入試と9月入試に出願できると解説されています。JCulPでは、国際バカロレアやA-Levelの保持者、指定されたインターナショナルスクールの修了者は海外学生入試に出願するよう求められています。

筆者の推奨は、在籍校のタイプを確定させてから志望プログラムを絞る順番です。「行きたいプログラム」から考えると、出願資格がないことに秋になって気づくケースがあります。

日本の高校に在籍しているなら、9月入学の選択肢はSILS・政経EDP・社学TAISIの3つに絞られます。

SILSの4月入学・国内選考の出願資格や筆記審査は、早稲田大学 国際教養学部(SILS)AO入試の解説記事で詳しく扱っています。

英語スコアと統一試験(SAT・IB等)の目安

9月入学で合否を左右するのは、英語スコアよりも統一試験(SAT、IB、A-Levelなど、各国の大学入学資格や標準テスト)のスコアです。英語は「提出が必須でも点数は問わない」プログラムがある一方、統一試験はほぼすべてのプログラムで原則提出を求められます。

英語4技能スコアの扱い(必須/基準点あり/点数不問の違い)

英語スコアの扱いは、大きく4つに分かれます。

類型

該当プログラム

内容

提出必須・点数不問

政経EDP

TOEFL iBTまたはIELTS Academicの提出が必要

基準点未満は出願不可

JCulP

区分ごとに最低点が設定されている

最低点なし・統一試験で免除

社学TAISI

SAT・ACT・英語で受けたIBDPなどを出す場合は英語スコア不要

最低点なし・高得点が前提

SILS

競争力の目安はTOEFL iBT 95、IELTS 7.0以上

政経はTOEFL iBTかIELTS Academicのスコアカード提出が必須で、点数は問いません。JCulPの日本学生入試は英検2300、TEAP 309、TOEFL iBT 72、IELTS 5.5などの基準点以上でなければ出願が受理されません。海外学生入試の基準はさらに高く、TOEFL iBT 95、IELTS 7.0、英検2600などです。

SILSは公式データページで、競争力のある出願者の目安をTOEFL iBT 95以上、IELTS 7.0以上と示しています。最低点はありませんが、実質的な目標ラインはここです。

TAISIは英語スコアの最低点を設けていません。英語を第一言語とする教育制度の統一試験(SAT、ACT、A-Level、英語で受けたIBDPなど)を出す場合は英語スコアの提出が免除され、それ以外はTOEFL iBTかIELTS Academicを提出します(TAISI Admissions FAQ)。英検は対象外です。

政経は、2028年9月入学から英語スコア免除の要件を変更すると予告しています。現高1・高2はこの変更の対象学年に入るため、出願前年の9月に公開される要項で確認してください。

英検のCSEスコアとTOEFL・IELTSの換算は、CEFRとは?英検・IELTSとのレベル対照表にまとめています。

統一試験の提出要件と合格者平均スコア

英語学位プログラムの入試では、SATなどの統一試験スコアの提出が原則必須です。居住国に有効な統一試験がない場合も、SATとACTは全プログラムで使えます。

公表・紹介されている合格者(または書類通過者)の平均スコアは次のとおりです。

プログラム

SAT

ACT

IBDP(42点満点)

基幹・創造理工

1499.3

32.6

37.7

政経EDP

1490.8

34.2

38.9

SILS

1452

33.2

37.5

社学TAISI

1432

32.0

36.8

JCulP(海外学生)

1415

36.0

36.4

出典:2026年9月入学の合格者平均スコア(早稲田大学入学センター)。IBDPは予測スコアを含みます。大学は最低点も合格を保証する点数も設けていません。

SAT 1,450点前後、IB 37点前後が合格者平均の中心です。政経と理工はSAT 1,490点台まで上がっています。

例外として、JCulPの日本学生入試(4月入学)はSAT・ACT・共通テストなどのスコアは任意提出で、最大3つまで出せます。日本の高校生にとって、統一試験の負担が軽い数少ない選択肢です。

数学スコアが合否を分けるプログラムがある理由

政経EDPと理工では、英語より数学のスコアが結果を分けます。

政経EDPでは、近年の選考で数学に関するスコアの有無が合否判断のかなり重要な基準になっているとされます。数学のスコアがないと合格の可能性が下がると要項に明記されている、という解説もあります(ホワイトアカデミー)。理工はさらに明確で、提出する標準化テストに数学・物理・化学の3科目のスコアを含めることが必須です。

英語が得意な受験生ほど、英語スコアを上げることに時間を使いがちです。政経や理工を狙うなら、TOEFLを105から110に上げるより、SATの数学セクションやIBの数学を固める方が合否に直結します。筆者はこの配分を強く推奨します。

英語スコアに足切りがあるのはJCulPだけです。その分、政経と理工では数学のスコアが差を生みます。

出願書類と志望理由エッセイで評価されるポイント

準備に一番時間がかかるのは、エッセイではありません。英文の成績証明書や推薦書、スコアの公式送付といった、自分だけでは完結しない書類です。

6プログラム共通の出願書類

プログラムごとに細部は違いますが、ほぼ共通するのは次の書類です。

書類

備考

出願資格を証明する書類

卒業(見込)証明書など

成績証明書

英文が必要な場合が多い

成績評価基準(Grading Scale)

学校の成績の付け方を示す書類

統一試験のスコア

SAT、ACT、IBDPなど

英語4技能試験のスコア

プログラムにより扱いが異なる

志望理由書(英語エッセイ)

設問・語数はプログラムごと

活動・表彰の証明書

課外活動、ボランティアなど

推薦書

政経、理工などで必要

理工の推薦書は、直近の在籍校の校長または教員が作成し、推薦者本人がオンラインで提出する形で1通必要です。

志望理由エッセイの設問・語数・評価軸

設問はプログラムごとに異なります。

JCulPは、自分の経験を土台にJCulPを志望する理由を英語で約800語にまとめる設問です。SILSの9月入学は、SILSの特定の学問領域を想定して学びたいことを書く必要があり、エッセイの内容を証明できる人物の連絡先の記載も求められます。連絡先に書く人には、事前に必ず許可を取ってください。

社学TAISIのStatement of Purposeは約1,000語です。取り組みたい社会課題とそれを形づくった自分の経験、TAISIで何を学びその課題にどう生かすかの2問に答えます(2027年9月入学募集要項)。要項は、生成AIで作った文章を自分のものとして出すと不正とみなされる可能性があるとも明記しています。

よくある失敗は、プログラムの学問内容に触れない「英語で学びたい」「国際的な環境が好き」で終わるエッセイです。JCulPについては、受験生の大半が「日本文化が好き」という話から書き始めてしまうという傾向があります。好きであることは前提で、評価されるのは「何を、どの視点で研究したいか」です。

組み立て方の参考になるのが、リザプロの合格者インタビューです。早稲田大学スポーツ科学部に総合型選抜で合格した今村さんは、志望理由書で思い出を並べるのではなく、「経験」から「学び」、そして「将来像」へつながる流れを意識したと振り返っています。入試方式は4月入学ですが、TAISIの「社会課題と経験→TAISIでの学び」という設問は、まさにこの順番で答える形になっています。

準備が遅れがちな書類(英文成績証明書・推薦書・スコア送付)

締切の2か月前には手配を始めてください。

高校によっては英文の成績証明書の発行に2〜4週間かかります。TOEFLなどは公式スコアレポートを早稲田大学宛てに送る必要があり、課外活動の証明書も顧問などに発行を依頼しなければなりません。

社学TAISIのFAQは、試験団体からのスコア送付に1か月以上かかる場合があるとしています。大学コード(SAT 0837、TOEFL 9342など)で送ったスコアは早稲田の英語学位プログラム全体で共有されるので、複数学部に出す場合も送付は1回で済みます。

1月から2月の出願なら、冬休み前に学校へ依頼を出すのが安全です。年末年始は学校の事務が止まります。

学校に頼む書類とスコアの送付は、自分では速められません。この2つを年内に終えておくと、1月はエッセイの仕上げに集中できます。

活動実績を書類にまとめる手順は、活動報告書のテンプレートと書き方も参考になります。

倍率・合格者数の推移

2026年9月入学の倍率は、理工7.8倍、JCulP 7.0倍、政経4.6倍、SILS 4.2倍、TAISI 3.4倍でした。5プログラム合計の志願者は2021年の1,962名から2026年は3,694名へ、ほぼ倍増しています。

2026年9月入学の志願者数と合格者数

プログラム

志願者

合格者

SILS(9月入学)

1,332名

315名

政経EDP

994名

218名

基幹・創造理工

801名

103名

社学TAISI

405名

119名

JCulP(海外学生)

162名

23名

出典:English-based Undergraduate Programs Admissions Statistics(2026年8月時点)。全出願ラウンドの合計です。SILSの公式データページでは2026年の志願者が1,322名と表記されており、入学センターの集計と10名の差があります。

倍率の推移(2021〜2026年)

理工は2021年の2.3倍から6年で約3.5倍に上がり、SILSも2024年の2.3倍から2026年は4.2倍です。TAISIは2025年に6.1倍まで跳ねた後、2026年は合格者を71名から119名に増やして3.4倍に戻っています。年ごとの振れ幅が大きいため、前年の倍率だけで出願先を決めるのは危険です。

倍率より先に見るべき「合格者平均スコア」

9月入学の倍率は、判断材料としては弱い指標です。

一般選抜なら倍率と自分の模試判定を並べて考えられますが、9月入学は出願者の母集団が年によって大きく変わり、評価の中心も統一試験です。筆者の見解として、倍率を見る前に「自分のSAT・IBが合格者平均に届いているか」を確認してください。届いていなければ、倍率が3倍台の年でも厳しい戦いになります。

プログラム別の合格対策

共通の土台は「統一試験のスコア」と「英語エッセイ」です。差がつくのは、そのプログラムの学問内容と自分の経験をどこまで具体的に結びつけられるかです。

国際教養学部(SILS)

SILSの9月入学は、Early Admissionで出すのが基本戦略です。

Early Admissionで出願すると審査の機会が実質的に2回あるため、特別な事情がなければEarlyが推奨されています。ただしEarlyとRegularは併願できず、どちらか一方を選ぶ仕組みです。

エッセイでは、卒業後の進路を明確にすることが求められます。教員紹介ページから関心のある教員の論文を読み、学びたい分野を具体化しておくと書きやすくなります。入学後、日本語を母語とする学生は原則1年間の海外留学が必修になる点も、学修計画に組み込みましょう。

政治経済学部 英語学位プログラム(EDP/旧EDESSA)

最優先は数学スコアの確保です。

出願時に政治学・経済学・国際政治経済学のいずれかを選び、学科の併願はできず、出願後に志望学科を変えることもできません。経済学を選ぶなら、数学との相性はより強く問われます。

政経は2027年度入学者から新カリキュラムを始めます。すべての学位プログラムで英語による必修科目を新設し、新入生必修の「Foundation Seminar」、解析学・線形代数学・確率論などを体系的に学ぶ「数学プログラム」、データ分析の必修科目が加わります(政治経済学部の発表)。エッセイで学びたい内容を書くなら、この数学・データ分析の柱に自分の関心をつなげると、学部が求める方向と噛み合います。

社会科学部 TAISI

TAISIは2011年9月に開設され、2023年以降は入学時期を9月に一本化しています。4月入学の募集はもうありません。

入学後の支援として、在学生がメンターとして学習や学生生活の相談に乗る制度があります。9月入学で周囲と時期がずれることに不安がある受験生には判断材料になります。

2026年9月入学から第3ラウンドは柔軟運用になり、第1・第2ラウンドで定員の約60名が埋まれば第3ラウンドは実施されません。ラウンドが進むほど合格枠も入学前奨学金の枠も減ると、公式FAQ自体が早めの出願を勧めています。本気でTAISIを狙うなら、1月の第1ラウンド(1月7日〜12日)に出してください。

文化構想学部 JCulP

日本の高校生は4月入学のJS入試、海外課程の修了者は9月入学の海外学生入試です。

JS入試は1次の書類審査と2次の英語面接の2段階選考です。面接では、プログラムの趣旨を理解しているか、少人数制に合ったコミュニケーション力があるか、4年間研究を続けられる英語力があるかが一貫して問われるとされています。

JCulPは各区分に同一年度内で1回しか出願できません。翌年の再出願は可能です。一発勝負の前提で書類を仕上げてください。

基幹理工学部・創造理工学部 英語学位プログラム

出願前に確認すべきは、統一試験の科目構成です。

学部

専攻

基幹理工

数学(数理科学)、情報理工・情報通信

創造理工

機械工学、社会環境工学

複数の学科に同時に出願することはできません。

大学は公式な最低点を設けず、出願書類全体で判断するホリスティック選考です。数学・物理・化学のスコアがそろっているかが、出願の前提条件になります。

どのプログラムも書類審査が軸ですが、失敗する場所はそれぞれ違います。志望先が決まったら、まずこの1点を潰してください。

慶應義塾大学の英語学位プログラムと比較検討している場合は、慶應義塾大学 PEARL入試の解説記事もあわせて確認してください。

合格までのスケジュールと併願戦略

統一試験の1回目は、高2のうちに受けてください。9月入学は出願時点のスコアで勝負が決まるため、高3の冬に初めて受けるのでは再受験の余裕がありません。

高1〜出願までの準備ロードマップ

時期

やること

高1

英検準1級レベルを目標に英語の基礎を固める。関心のある学問テーマを探し始める

高2

TOEFL・IELTSを受験開始。SATやIBの数学を計画的に学習し、1回目の統一試験を受ける

高3の春〜夏

統一試験を再受験してスコアを確定。エッセイの初稿を書く

高3の秋

英文証明書・推薦書の手配。4月入学方式を併願する場合はその出願と筆記対策

高3の冬〜1月

エッセイ最終稿、スコアの公式送付、オンライン出願

高2の過ごし方全般は、高2のうちに大学受験の対策としてやるべきことでも解説しています。

4月入学(国内選考)との併願パターン

日本の高校生がSILSを目指す場合、4月入学と9月入学の2回挑戦できる日程になっています。

SILSの4月入学・国内選考は、2025年度入試で出願が9月1日〜8日、筆記審査が10月26日、合格発表が11月24日でした(リザプロ SILS解説)。9月入学の出願は1月からです。国内選考の結果を見てから、9月入学に出すかを判断できます。

評価軸が違う点を踏まえて、筆者は次のように使い分けを推奨します。

  • Critical Writingなど筆記に強く、統一試験のスコアがない生徒は、4月入学・国内選考を本命にする
  • SATやIBのスコアが合格者平均に届いている生徒は、9月入学を本命にし、4月国内選考を先に受けて本番経験を積む

早稲田の国際アドミッションズ・オフィスは、AO入試では複数の学部に出願できると案内しています(政経と理工は、出願時に選べる専攻が1つだけ)。社学TAISIのFAQも、他の学部プログラムとの同時出願は審査に影響しないと明記しています。

複数の学部に合格した場合、手続き期間が重ならず入学日が同じであれば、先に納めた入学金や学費を後から合格した学部へ振り替えられます(TAISI募集要項)。SILSは、4月入学・国内選考で不合格になっても、同じ年度の9月入学に出願できます。11月下旬の結果を見てから、1月の9月入学出願に切り替える流れが組めるということです。

高校卒業から9月入学までの約半年をどう使うか

日本の高校を3月に卒業して9月に入学する場合、約半年の空白が生まれます。

この期間は、英語で授業を受ける準備に充てられます。アカデミックライティングの練習、専攻分野の英語文献の講読、短期留学、インターンなどです。志望理由書に書いた学修計画の「最初の一歩」をこの半年で実行しておくと、入学後の履修もスムーズになります。

入学日は2027年9月21日です。ただし、新入生向けのオリエンテーションやプレースメントテストは9月上旬(JCulPは9月中旬)に始まるため、実際に自由に使えるのは3月の卒業から9月上旬までの約5か月半です(TAISI・JCulPの募集要項)。また合格後は、最初の入学手続き(入学金・学費の納付)が発表から約10日〜3週間で締め切られます。他大学との併願では、この締切を先に並べておきましょう。

4月入学の結果が出た後に9月入学の出願が始まるので、1月の出願は11月の結果を見てから決められます。

まとめ

早稲田大学の9月入学は6つの英語学位プログラムの入試ですが、日本の高校生が出願できるのはSILS・政経EDP・社学TAISIの3つです。理工系2学部は海外課程の修了者向けで、JCulPは4月入学の日本学生入試が日本の高校生の入口になります。

合否を分けるのは、英語スコアより統一試験です。政経と理工では数学のスコアの有無が結果を左右します。倍率の数字を見る前に、合格者平均スコアと自分のスコアを比べてください。

判断の順番は3つです。在籍校のタイプから出願できるプログラムを確定させる。統一試験のスコアで9月入学が現実的かを判断する。4月入学方式との併願を含めて、出願の組み立てを決める。

リザプロでは、志望プログラムの選び方から英語エッセイの作成まで、個別に相談を受け付けています。出願区分の判断に迷う場合は、リザプロの推薦入試対策コースから相談してください。

よくある質問(FAQ)

日本の高校からでも早稲田の9月入学に出願できますか?

できるのは、国際教養学部(SILS)、政治経済学部の英語学位プログラム、社会科学部TAISIの3つです。基幹理工・創造理工の英語学位プログラムは日本の教育課程の修了者は出願できません。文化構想学部JCulPは、日本の高校生向けの入試が4月入学です。

英検だけで出願できますか?

プログラムによります。政経はTOEFL iBTかIELTS Academicの提出が必須で、社学TAISIもTOEFL iBTかIELTSのみを受け付けます(SATや英語で受けたIBなどを出せば免除)。英検で出願できるのはJCulPの日本学生入試(4月入学)で、CSE 2300以上が必要です。

SATやIBのスコアがないと出願できませんか?

9月入学の多くは、SATやIBなど統一試験のスコア提出が原則必須です。SATとACTは全プログラムで利用できます。統一試験がない日本の高校生は、JCulPの日本学生入試(統一試験は任意提出)やSILSの4月入学・国内選考が現実的な選択肢になります。

面接はありますか?

9月入学は書類審査が中心で、面接は大学が指定した受験生だけが受けます。面接に呼ばれなくても不合格が決まったわけではありません。例外として、JCulPの日本学生入試(4月入学)は英語面接が必須です。

複数のプログラムや学科に同時に出願できますか?

できます。早稲田の国際アドミッションズ・オフィスは、AO入試では複数学部への出願が可能と案内しています。ただし政経と理工は出願時に選べる専攻が1つだけ、SILSの9月入学はEarlyとRegularのどちらか一方、JCulPは各区分に年1回、TAISIは不合格後に同じ年度の再出願ができません。

SILSは4月入学と9月入学のどちらが受かりやすいですか?

2026年は9月入学が4.2倍(志願1,332名・合格315名)まで上がり、2025年度の4月入学・国内選考(4.7倍)との差は縮まっています。9月入学の出願者はSATやIBのスコアを持つ層が中心で、評価方法も違います。統一試験のスコアが合格者平均(SAT 1452、IB 37.5)に届いていれば9月入学、筆記に強く統一試験がなければ4月入学が向いています。