2026年10月25日に行われた早稲田大学国際教養学部(SILS)のAO入試(2027年度・4月入学国内選考)は、Critical Writingが大問3題・マーク式37問・英語エッセイ2本という、昨年とまったく同じ形式でした。
英文の素材には試験の9か月前に出た学術誌の論説まで使われ、日本語の「志望理由に関するエッセイ」は2年続けて、学問の確かさを問う設問になりました。
この記事は、受験生が持ち帰った問題冊子(SILSの筆記審査は問題冊子の持ち帰りが認められています)をもとに、総合型選抜専門塾リザプロが全37問の解答例と前年度との比較をまとめたものです。
2027年度 SILS AO入試(国内選考)の出題一覧
試験 | 出題テーマ | 素材の出典 |
|---|---|---|
Critical Writing 大問I | 気候変動への適応策と高齢者 | Nature Human Behaviour(2026年1月) |
Critical Writing 大問II | 子どもはなぜ笑うのか、AIは笑えるか | The New Yorker(2025年9月) |
Critical Writing 大問III | アイルランドのギタリスト、ロリー・ギャラガーの伝記 | 書籍(2018年刊) |
志望理由に関するエッセイ | 1277年パリの禁令「第37命題」と学問の確実性 | 本学教員による訳 |
合格発表は11月23日(月)10時、出願システム(TAO)上で行われます。
本記事の解答はリザプロによる解答例で、大学の公式解答ではありません。大学は著作権の許諾が得られた部分のみ問題を公開しており、昨年度分は2026年1月20日に掲載されました。
早稲田大学国際教養学部(SILS)とは|英語で学ぶリベラルアーツ
SILSは2004年に開設された、授業のほぼすべてを英語で行うリベラルアーツ(特定の専攻に絞らず幅広い分野を学ぶ教育)の学部です。日本語を母語とする学生には、1年間の海外留学が卒業要件として課されます。
授業の大半が英語、日本語母語の学生は留学必修
カリキュラムは、日本語母語の学生向けの「Study Plan 1」と、それ以外の学生向けの「Study Plan 2」に分かれます。授業はどちらも英語で、両者は基本的に同じ教室で学びます。
Study Plan 1では、1年間の留学が必須です。
学ぶ分野は、生命・環境、哲学・歴史、経済・ビジネス、政治・国際関係など7つのクラスター(科目群)から横断的に選べます。この「分野をまたいで考える力」は、後で見る日本語エッセイの出題にも直結しています。
AO入試の3区分と国内選考の位置づけ
SILSのAO入試には3つの区分があり、筆記審査が課されるのは「4月入学・国内選考」だけです。
区分 | 募集人員 | 主な対象 | 選考方法 |
|---|---|---|---|
4月入学・国内選考 | 95名 | 日本の高校の卒業(見込)者 | 書類審査+筆記審査(面接なし) |
4月入学・国外選考 | 100名 | 海外の12年課程の修了(見込)者(国内のインターナショナルスクールを含む) | 書類審査(必要な人のみ面接) |
9月入学 | 150名 | 国内外を問わない | 書類審査(必要な人のみ面接) |
国内のインターナショナルスクールやIB資格の保持者は、国内選考には出願できません。国外選考の対象です。
この記事は国内選考の筆記審査を中心に扱います。国外選考と9月入学の出願資格・倍率・SATの目安は、「早稲田大学9月入学の総合型選抜・英語学位プログラム徹底比較」で詳しく解説しています。
出典:早稲田大学国際教養学部 入試情報、2027年度 AO入学試験要項(国内選考)
2027年度SILS AO入試(国内選考)の日程・選考方法・変更点
筆記審査は10月25日(日)、合格発表は11月23日(月)の10時です。今年は調査書の提出が必須になり、募集人員が100名から95名に減りました。
日程(出願9月1日〜8日、筆記10月25日、発表11月23日)
項目 | 日程 |
|---|---|
出願(TAO入力・書類郵送) | 2026年9月1日(火)〜9月8日(火)※郵送は当日消印有効 |
受験票の発行 | 10月19日(月)10:00 |
筆記審査 1限 Critical Writing | 10月25日(日)13:00〜15:00 |
休憩 | 15:00〜16:00 |
筆記審査 2限 志望理由に関するエッセイ | 16:00〜16:30 |
合格発表(TAO上) | 11月23日(月)10:00 |
入学手続料の振込 | 11月24日(火)〜12月8日(火) |
会場は早稲田キャンパスでした。
どちらか1科目でも欠席すると不合格になります。
選考方法(書類審査+筆記審査、面接なし)
選考は「書類審査」と「筆記審査」で、出願者全員が筆記審査を受けます。面接はありません。
筆記審査の中身は次の2つです。
- Critical Writing(120分):与えられた英語の資料を理解・分析し、自分の考えを表現する試験
- 志望理由に関するエッセイ(日本語・30分):中学卒業以降の経験を踏まえ、当日示される主題と関連付けて志望理由を論理的に書く試験
大学は「書類審査と筆記審査のどちらかに重きを置くことはない」と要項のQ&Aで答えています。配点は公表されていません。
2027年度の変更点(調査書必須・95名・スコア有効期間)
今年の受験生と来年の受験生、どちらにも関わる変更が3つあります。
変更点 | 2026年度まで | 2027年度 |
|---|---|---|
出身学校長が作成する調査書 | 出願資格の証明書類の一つ(高卒認定の合格者は合格成績証明書で出願可) | 提出必須(原本・厳封)。提出できない人は出願不可 |
国内選考の募集人員 | 100名 | 95名 |
英語外部試験の有効期間 | 2023年9月1日以降の受験分 | 2024年9月1日以降の受験分 |
調査書の必須化で、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)の合格者は国内選考に出願できなくなりました。
同じ2027年度には、一般選抜の枠も175名から170名に減り、新たに共通テスト利用入試(10名)が始まっています。共通テスト利用入試は英検1級・TOEFL iBT 95点・IELTS 7.0などの英語スコアが出願要件で、国語と数学の計400点で判定されます。
出典:2027年度 AO入学試験要項(国内選考)、2027年度入試以降の大学入学共通テスト利用入試導入について(早稲田大学国際教養学部)
倍率と難易度の推移
国内選考の実質倍率は、直近5年間で3.6〜4.7倍の間を動いています。昨年度(2026年度)は668名が筆記審査を受け、150名が合格しました。
国内選考の倍率(2022〜2026年度)
入試年度 | 筆記審査の受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
|---|---|---|---|
2026年度 | 668名 | 150名 | 4.5倍 |
2025年度 | 690名 | 147名 | 4.7倍 |
2024年度 | 591名 | 163名 | 3.6倍 |
2023年度 | 568名 | 149名 | 3.8倍 |
2022年度 | 607名 | 156名 | 3.9倍 |
実質倍率は「筆記審査の受験者数 ÷ 合格者数」です。2026年度の志願者は721名で、筆記審査までに53名が欠席しています。
見落とされがちな数字があります。合格者数は毎年、募集人員(100名)の1.5倍前後で推移してきました。入学手続きをしない合格者を見込んだ人数と考えられます。募集人員の数字だけを見て倍率を計算すると、実態より厳しく見積もることになります。
2027年度は募集人員が95名に減りました。合格者数がどこまで絞られるかは、結果の公表を待つ必要があります。
国外選考・9月入学との比較
倍率がいちばん高いのは国内選考です。
入試年度 | 国内選考 | 国外選考 | 9月入学 |
|---|---|---|---|
2025年度 | 4.7倍 | 3.2倍 | 2.8倍 |
2024年度 | 3.6倍 | 2.5倍 | 2.3倍 |
2023年度 | 3.8倍 | 2.1倍 | 2.0倍 |
国外選考と9月入学の2026年度の結果は、2026年10月時点で大学の入試データページに載っていません。どの区分も上昇傾向にあり、国外選考や9月入学なら楽に入れる、という状況ではありません。
出願書類と英語スコアの目安
国内選考で提出する書類は、郵送の調査書とオンラインのApplication Formの2つだけです。英語の志望理由書(Essay)を出すのは国外選考と9月入学で、国内選考にはありません。
提出書類は調査書とApplication Formの2つ
書類 | 提出方法 | 注意点 |
|---|---|---|
出身学校長が作成する調査書 | 簡易書留・速達で郵送 | 原本・厳封。2026年7月1日以降の発行分。成績段階別人数の記載が必要 |
Application Form | TAO(オンライン出願システム)に入力 | 顔写真、学歴、英語外部試験の証明書、検定料(35,000円)の決済証明などをアップロード |
日本語・英語以外の語学能力証明書 | TAOにアップロード | 任意。CEFR B1(日常的な話題を理解・説明できる段階)以上で、4技能を測る試験のみ |
SILSは2026年度入試で、それまで出願時に出していた日本語の志望理由書と活動の記述を廃止し、当日の筆記試験に切り替えました。古い対策記事には「出願時に志望理由書(800字)を提出」と書かれたままのものがあるので、日付を確認してください。
英語スコアは点数不問、ただし実質の目安はある
英語外部試験は、次の4種類から1つ以上の提出が必須です。点数の基準はありません。
試験 | 提出方法 | 使えないもの |
|---|---|---|
英検 | 合格証明書またはCSEスコア証明書をアップロード | 二次試験が2024年8月31日以前のもの、合否通知、不合格級のCSE証明書 |
TOEFL iBT | アップロード+ETSからの直送(DIコード9342) | Home Edition、MyBestスコア |
IELTS | アップロード+試験団体からの直送 | Academic以外、IELTS Online |
GTEC | Official Score Certificateをアップロード | アセスメント版 |
よくある失敗は、TOEFLやIELTSの直送が締切に間に合わないことです。直送が届かなければ出願は受理されません。要項は、締切の3週間以上前に手配するよう求めています。
点数の目安について、SILSは国外選考と9月入学の競争力のある水準を「TOEFL 100点以上、IELTS 7.0以上」と公表しています。国内選考の合格者の数値は公表されていません。
リザプロとしては、国内選考でもこの水準(英検なら1級)を目安に置くことを勧めます。理由は単純で、Critical Writingの英文は、学術誌や英米の有力紙・誌の記事をもとに作られているからです。
各試験のスコアとCEFRの対応は、「CEFRとは?英検・IELTSとのレベル対照表」にまとめています。
出典:2027年度 AO入学試験要項(国内選考)、2026年度 AO入学試験要項(国内選考)、早稲田大学国際教養学部 入試データ
【解答速報】2027年度 Critical Writing の出題と解答例
今年のCritical Writingは「マーク式37問で英語の地力を測り、英語エッセイ2本で考える力を測る」構成でした。マークのうち20問は大問Iの文法・語法問題で、ここを落とすと挽回が難しくなります。
以下の解答はリザプロによる解答例です。
全体構成(大問3・マーク37問・英語エッセイ2本)
大問 | テーマ | 出典 | 設問 |
|---|---|---|---|
I. Structure and Written Expression | 気候変動への適応策は高齢者を考慮すべきだ | Liming Yaoほか, Nature Human Behaviour, 2026年1月29日 | 空所補充16問、誤文訂正4問 |
II. Essay 1 | 子どもはなぜ笑うのか(ユーモアの発達とAI) | Joshua Rothman, The New Yorker, 2025年9月2日 | 語彙3問、内容理解4問、英語エッセイ |
III. Essay 2 | ロリー・ギャラガー伝記の序文 | Julian Vignoles, Rory Gallagher: The Man Behind the Guitar, 2018年 | 内容理解3問、語群補充6問、語彙1問、英語エッセイ |
大問I(気候変動への適応策と高齢者)解答例
素材は、2050年に65歳以上が世界人口の16%を超える見通しを前提に、各国の気候変動への適応策が高齢者の事情(固定収入、移動の困難、デジタル機器へのアクセスなど)を見落としていると論じる論説です。
設問1:空所補充(16問)
No. | 解答例 | 根拠 |
|---|---|---|
1 | (a) constraints | 直後に「固定収入で適応策に手が届かない」とあり、財政的な「制約」 |
2 | (d) struggle to access | struggle to+動詞が正しい形。have difficulty は accessing が続く |
3 | (c) uniform | 年齢に応じた対策が欠けている、という文脈から「一律の」行動反応 |
4 | (b) erode | 情緒的な苦痛が社会的つながりを「損なう」 |
5 | (b) exhibit | exhibit biases(偏りを示す)というコロケーション(よく組み合わさる語の結びつき) |
6 | (c) pension | 限られた「年金」や他の固定収入 |
7 | (d) to | exposure to(〜にさらされること) |
8 | (b) For example | 直前の「すでに実施している国もある」の具体例として英国が続く |
9 | (d) real-time | 「リアルタイムの」気象警報システム |
10 | (a) alternative | 直後に電話・ラジオ・掲示板が例示され、デジタル手段のない高齢者に届く「代わりの」手段 |
11 | (d) safeguarding | 公共の福祉を「守る」 |
12 | (c) not all | 直後で「社会的なトレードオフを生む政策もある」と続く部分否定 |
13 | (c) necessary for | 尊厳と幸福「に必要な」条件。essential は in ではなく for と結びつく |
14 | (b) linked to | have been linked to(〜と関連づけられてきた)。have been led to は不可 |
15 | (c) those | 前に出た older adults を受けて those living in rural areas |
16 | (c) one-size-fits-all | 直後で「脆弱な集団の個別のニーズを見落とす」と続く、「画一的な」手法 |
設問2:誤文訂正(4問)
文 | 解答例 | 訂正 |
|---|---|---|
(A) | (b) | had intensified → has intensified(後に続く makes と時制がかみ合わない) |
(B) | (a) | compounding → compounded(孤立が「さらに悪化させられる」受け身) |
(C) | (c) | discourage → discourages(主語は the combination で単数) |
(D) | (d) | (d) が isolation to なら isolation from が正しい形 |
空所補充では、3・10・13・14・16で受験生の解答が割れていました。どれも、文法の形よりも直後の文の内容から決める設問です。
大問II(子どものユーモアとAI)解答例とEssayの論点
素材は、もうすぐ2歳になる娘の笑いを入り口に、子どものユーモアの発達研究と、AIは本当に笑えるのかという問いを結びつけた記事です。筆者は「冗談を言い、笑い、場をつくる」ことを条件にした独自のテストを提案し、それが知性ではなく人間らしさの尺度に近づくかもしれないと結論づけます。
設問 | 解答例 | 根拠 |
|---|---|---|
1(1) saturated | (b) filled | 幼い子どもの生活はユーモアで「満ちている」 |
1(2) prodigious | (b) impressive | ChatGPTのユーモア生成能力が「驚くほど高い」 |
1(3) within our rights to question | (a) allowed to revisit | 「疑問を呈してよい」の意。(b) は legal authority が強すぎる |
2 create a little circle of engagement | (d) have social skills | 前段落のテストの条件「社会的なつながりの感覚を引き出す」に対応 |
3 本文から推論できないもの | (b) | 本文はユーモアを「早期の創造性」と位置づけており、発達が創造性を妨げるとは述べていない |
4 第4・5段落の内容 | (d) | 霊長類の笑いは群れを結びつける機能を持ち、人間の意図的な笑いの働きと重なる |
5 AIを持ち出した理由 | (b) | AIの限界を通して、人間であることの意味を浮かび上がらせるため |
Essay 1の設問:第5段落で「人間を動物から区別するとされる性質」が挙げられています(アリストテレスの理性、ウィトゲンシュタインの言語、サルトルの意志、そして筆者の言う笑い)。そのうち少なくとも2つを取り上げ、それが人間性を示すのか、示しきれないのかを、自分の人生経験を具体例にして英語で論じる問題です。
- 冒頭の1〜2文で、選んだ2つの性質と「示す/示しきれない」の立場を言い切る
- 性質1つにつき1段落を使い、それぞれに自分の経験を1つずつ当てる
- 本文のAIの議論(AIは言語も推論も扱えるが、自発的に笑うことはできない)を、自分の主張の補強に借りる
昨年の英語エッセイは「理由と例を挙げて立場を論じよ」という指示でしたが、今年は設問文に「自分の人生経験から具体例を挙げて」と明記されました。本文の要約だけで字数を埋めた答案は、この条件を満たせません。
大問III(ロリー・ギャラガーの伝記)解答例とEssayの論点
素材は、47歳で亡くなったアイルランドのブルース・ロックのギタリスト、ロリー・ギャラガーの伝記の序文です。舞台では外向的で情熱的なのに、私生活は質素で内向的だったこと、ギターの才能の陰で作曲の繊細さが見過ごされてきたことが描かれます。
設問 | 解答例 | 根拠 |
|---|---|---|
1 演奏との関係 | (d) | 舞台で過ごす時間のために生きたとあり、喜びであり逃避でもあった |
2 私生活がわかりにくい理由 | (b) | 取材は主にツアーやレコードの宣伝で、私生活の話題を避けていた |
3 作曲について | (a) | ギターの才能が作曲の繊細さを覆い隠してきた、という記述に対応 |
4 語群補充 (1)〜(6) | (1)(e) despite (2)(d) but (3)(a) after (4)(f) when (5)(b) as (6)(c) before | 穏やかな物腰「にもかかわらず」/「しかし」名声は困難も/キャリアの頂点の「後」/取材を受けた「とき」/初期を振り返り「ながら」/それが何かを知る「前から」 |
5 trials | (d) ordeals | 生涯の「試練」 |
Essay 2の設問:ギャラガーは典型的な「派手で破天荒な」ロックミュージシャンのようには装わず、振る舞わなかった。人が自分の職業のステレオタイプ(型にはまったイメージ)どおりに振る舞わないのは良いことか。例として、大学教授になった人は典型的な教授らしく装い、振る舞うべきか。理由と例を挙げて英語で論じる問題です。
書き方の方向性は次のとおりです。
- 「型に従わないのは良いことか」に賛否のどちらかで答え、条件を付けるなら1文で示す
- 理由は2つに絞る(例:役割への信頼と、個人の誠実さ)
- ギャラガーの例を1つ、自分の身近な職業の例を1つ使う(教師、医師など)
難易度と講評
形式は昨年と同じでしたが、大問Iの英文は昨年より硬くなりました。昨年の大問Iはビジネス誌の一般向けコラムでしたが、今年は学術誌の論説で、vulnerability(脆弱性)、mortality(死亡率)など学術語彙の密度が高い文章です。
大問IIは内容理解の選択肢が紛らわしく、大問IIIは語群補充が接続語の文法判断で、取りこぼしやすい設問でした。
【解答速報】志望理由に関するエッセイ(日本語)の出題と書き方のポイント
今年の素材は、1277年にパリ司教エティエンヌ・タンピエが「大学教育から排除すべき誤り」として指定した219の命題のうちの1つ、第37命題でした。3つの設問を30分で書く形式で、問われたのは志望理由そのものより、学問の確かさをどう考えるかです。
出題内容(1277年パリの禁令・第37命題)
問題文は次のとおりです(試験時間30分)。
13世紀のパリにおいて、大学はローマ・カトリック教会の影響下にありましたが、神学部とは異なり、学芸学部では、キリスト教の創造説と矛盾するような、古代ギリシアの自然学を教えることも許されていました。しかし、これを問題視したローマ教皇ヨハネス21世からの調査依頼を受け、1277年、パリの司教エティエンヌ・タンピエは、219の命題を、大学教育から排除されるべき誤った命題として指定しました。それらの命題のうちの一つは以下のようなものでした。
「おのずと明らかであるか、あるいはおのずと明らかな事柄から証明されうるのでない限り、何も信じられるべきではない」(第37命題)。
La Condamnation parisienne de 1277. Texte latin, traduction, introduction et commentaire par D. Piché, Paris : Vrin, 1999, p. 90.(本学教員による訳)
1)「おのずと明らかであるか、あるいはおのずと明らかな事柄から証明されうる」もののみを確実とする学問として、どのような学問が考えられますか。また、そうではない学問として、どのような学問が考えられますか。あなたが中学卒業以降に学んだ学問を具体例として説明してください。
2)あなたがSILSで学びたいと思っている学問分野において、仮に「おのずと明らかであるか、あるいはおのずと明らかな事柄から証明されうる」もののみを確実と考える場合、この条件にあてはまらないものを、どのような方法で検証することが必要だと考えられますか。具体的な学問分野の例を挙げて説明してください。
3)大学での学問に第37命題のような主張は有益と考えられますか、あるいは有害であると考えられますか。あなたの考えを論拠とともに述べてください。
*解答は日本語で記述してください。
引用元:早稲田大学 2027年度 筆記審査「志望理由に関するエッセイ(日本語)」問題冊子(2026年10月25日実施)
13世紀のパリ大学は教会の影響下にありましたが、学芸学部ではキリスト教の創造説と矛盾する古代ギリシアの自然学も教えられていました。これを問題視した教皇ヨハネス21世の調査依頼を受けて出されたのが、1277年の禁令です。
第37命題の中身を平たく言えば、「それ自体で明らかなこと、またはそこから証明できること以外は、何も信じるべきではない」という主張です。
つまり、証明できることしか確実とは認めない立場。教会はこれを、信仰の領域を脅かす「誤った命題」として退けました。
題材文には、命題そのものと、それを誤りとして禁じた教会という2つの層があります。命題を教会の主張だと取り違えると、設問3の答えが逆向きになります。読み違えやすい作りです。
設問1〜3で求められていたこと
設問 | 問われていること | 書き方の方向性 |
|---|---|---|
1 | 第37命題の条件を満たす学問と満たさない学問を、中学卒業以降に学んだ学問を例に説明する | 異論の出ない組み合わせで答える。満たす側は数学・論理学(自明な公理や定義から証明を積み上げる)。満たさない側は倫理学・道徳・神学(キリスト教学)など、答えが一つに定まらない問いを扱う学問。結論だけで終えず、その学問が何を根拠にしているかという分類の理由まで書く |
2 | SILSで学びたい分野で、条件にあてはまらないものをどう検証するか、具体的な分野を挙げて説明する | 志望分野の研究方法を名指しする。例:国際関係なら一次史料・事例比較・統計、歴史学なら史料批判と遺跡・遺物の調査、心理学なら実験と再現性、言語学ならコーパス分析(大量の言語データの分析)。「自明からの証明」ではなく、実証(証拠に基づく裏付け)、反証、再現性、査読(専門家による審査)で確からしさを高める、という考え方を示す |
3 | 第37命題のような主張は、大学の学問にとって有益か有害か | リザプロが勧めるのは条件つきの立場。「疑う姿勢(方法)としては有益だが、学問を排除する基準としては有害。厳密に当てはめると、実証で成り立つ学問や価値を扱う学問まで締め出してしまう」と言い切り、多様な方法の学問を横断するリベラルアーツにつなげる |
第37命題の「証明」は、自明な前提から演繹的に導くことを指すと読むのが自然です。物理学の法則は観測から、歴史学の通説は史料や遺跡から、実証(証拠に基づく裏付け)によって確立されます。観測事実を「おのずと明らか」とみなす読み方もありうるため、どちらの側に置くかは解釈が割れます。だからこそ設問1の例には使わず、設問2で「実証によって検証する学問」の例として使うのが安全です。
ここで1つ、取り違えてはいけない点があります。第37命題は「何を確実とみなすか」の基準で、「何が科学か」の基準ではありません。条件を満たさないからといって、歴史学や物理学が科学でないことにはなりません。歴史学は史料と遺跡に基づく、れっきとした学問です。答案で「条件を満たさない学問=劣った学問」と書くと、学問理解そのものを疑われます。
設問3には、ひとひねりあります。この命題は、理性を重んじる立場を抑えるために教会が「誤り」とした命題です。今日の大学から見れば「根拠のない主張を退ける原則」として評価できる面と、「証明できない知(経験科学、人文学、価値の問題)を締め出す」面の両方を持ちます。この歴史的な背景まで踏まえて立場を決めた答案は、一段深く読めていると評価されるはずです。
教会がこの命題を禁じたのは、信仰、つまり神学がこの条件を満たさないからでした。設問1で神学を「満たさない側」の例に挙げておくと、設問3にそのまま話をつなげられます。
もう1つの注意点は、設問1の「中学卒業以降に学んだ学問」の範囲です。指しているのは学習内容で、志望分野以外の数学や理科も含まれます。部活動やボランティアのエピソードは、設問の指定から外れます。
「志望理由」ではなく「学問の方法論」の試験である理由
科目名は「志望理由に関するエッセイ」ですが、今年の設問で志望分野が出てくるのは設問2だけでした。設問1と3は、知識がどんな根拠で確かだと言えるのか、という学問論そのものです。
大学の要項は、この試験を「当日問題内で提示される主題と関連付けて、志望する理由を論理的に記述する審査」と定めています。主題の側が学問の方法論で、志望理由はそれに関連付けて書く、という順番です。
昨年のパスカルの出題も同じ構造でした(次の章で比較します)。事前に暗記した志望理由の文章を書き写すような答案は、設問1と3にほぼ答えられません。
時間は30分で3問です。リザプロでは、読解と構想に5分、設問1・2に13分、設問3に10分、見直しに2分を目安にしています。昨年の解答用紙は設問ごとの枠に7行前後の罫線で、長く書く試験ではなく、短く正確に書く試験です。
昨年の試験当日にも、受験生向けのQ&Aサイトに「日本語エッセイも時間が足りず自信がない」という受験生の投稿がありました。
出典:2027年度 AO入学試験要項(国内選考)、問題冊子(2027年度筆記審査 志望理由に関するエッセイ)
前年(2026年度)との比較でわかる出題傾向
形式は昨年と完全に同じでした。違いは2つで、英文素材が新しくなったことと、日本語エッセイで学問を分ける「軸」が変わったことです。
Critical Writing比較表(形式は完全踏襲、素材が新しくなった)
項目 | 2026年度(昨年) | 2027年度(今年) |
|---|---|---|
大問I 素材 | 他人と自分を比べるのをやめる3つの方法(Fast Company, 2022年) | 気候変動への適応策と高齢者(Nature Human Behaviour, 2026年1月) |
大問I 設問 | 空所補充16問+誤文訂正4問 | 同じ |
大問II 素材 | ユーモアの翻訳の難しさ(UNESCO Courier, 2022年) | 子どものユーモアとAI(The New Yorker, 2025年9月) |
大問II 設問 | 内容理解4問+語群補充6問+Essay | 語彙3問+内容理解4問+Essay |
大問III 素材 | 自然環境に近づけたマウスの脳科学実験(Nature, 2023年) | ロリー・ギャラガー伝記の序文(書籍, 2018年) |
大問III 設問 | 語彙3問+内容理解4問+Essay | 内容理解3問+語群補充6問+語彙1問+Essay |
マーク式の設問数 | 37問 | 37問 |
Essay 1 | 「ボクは君が好き」と「俺はお前が好きだ」はどちらも I like you と訳される。翻訳で読む文学・映画は原作の体験か、新しい創作か | 人間を動物から区別するとされる性質のうち2つ以上について、人間性を示すかどうかを自分の経験から論じる |
Essay 2 | 研究で動物の遺伝子を改変するのは必要な妥協か、研究は自然な方法に徹するべきか | 職業のステレオタイプどおりに振る舞わないのは良いことか(大学教授の例) |
大問IIとIIIの設問の型が入れ替わったのが唯一の形式上の違いです。語群補充(6択)は昨年は大問II、今年は大問IIIにありました。
素材の新しさの変化は数字で見ると明確です。昨年の英文は試験の2〜3年前の記事でした。今年の大問Iは9か月前、大問IIは約1年前の掲載です。
日本語エッセイ比較表(パスカルから1277年の禁令へ)
比較の前に、昨年(2026年度)の問題文を全文載せます。今年の問題文は前の章に掲載しています。
以下は、17世紀フランスの哲学者・物理学者・数学者・宗教者であったパスカルが、1651年頃に、真空を論じる論文のために書いたと推測される、序文の断片の日本語訳です。このテクストでパスカルは、古代ギリシアの哲学者アリストテレスの時代から存在しないとされてきた真空が、1643年ガリレイの弟子トリチェリによる実験で確認されたことを受け、特定の学問において先人の見解を乗り越えることの重要性を説いています。
歴史、地理、法学、語学、またとりわけ神学におけるように、著者たちが書いたことをただ知ろうと探究する分野においては、〔…〕必然的に、それについての書物に依拠しなければならない。というのも、それについて知りうることはすべて、そこに含まれているからである。〔…〕感覚や推論の対象となる主題の場合は、それと同様ではない。そこでは、権威は無益である。理性のみが、それらを知る資格がある。〔…〕かくして、幾何学、算術、音楽、物理学、薬学、建築学、また実験と推論に従うあらゆる学問は、完全になるために、〔新たなものを加えて〕増進されなければならない。
Blaise Pascal, Préface au Traité du vide (in: Blaise Pascal, André Clair (éd.), De l'esprit géométrique ; entretien avec M. de Sacy ; écrits sur la grâce et autres textes, Paris : Flammarion, 1985), pp. 57-58.(本学教員による訳)(〔…〕は中略を示す)
1)パスカルはここで学問を二つの種類に分類しています。あなたがSILSで学びたい学問は、その特性からして、二つのうちいずれの種類に属するとあなたは考えますか。
2)上のように分類した理由を、あなた自身が中学卒業以降に学んだことを踏まえて説明してください。
3)パスカルの分類に対してあなた自身はどのように考えますか。賛成、反対、その他の意見を、論拠とともに述べてください。
*解答は日本語で記述してください。
引用元:早稲田大学入学センター 2026年度 筆記審査「志望理由に関するエッセイ(日本語)」(2026年1月20日公開。大学はWeb掲載にあたり、Blaise Pascal, Fragment de Préface sur le Traité du Vide, CC BY-SA 4.0 と出典を追記しています)
項目 | 2026年度(昨年) | 2027年度(今年) |
|---|---|---|
素材 | パスカル『真空論序言』の断片(1651年頃)。トリチェリの実験で真空が確認されたことを受けて書かれた | 1277年パリの禁令・第37命題 |
学問を分ける軸 | 書物の権威に依拠する学問(歴史・地理・法学・語学・神学)か、感覚と推論に従う学問(幾何学・算術・音楽・物理学・医学・建築学)か | 自明・証明可能なものだけを確実とする学問か、そうでない学問か |
設問1 | 自分がSILSで学びたい学問はどちらに属するか | 両方の種類の学問の例を、中学卒業以降の学びから説明 |
設問2 | その分類の理由を、中学卒業以降の学びを踏まえて説明 | 志望分野で、条件にあてはまらないものをどう検証するか |
設問3 | パスカルの分類への賛否(分類が妥当かを問う記述的な問い) | 第37命題は大学の学問に有益か有害か(あるべき姿を問う規範的な問い) |
「中学卒業以降の学び」の使い方 | 設問2で、自分の分類の理由として使う | 設問1で、学問を分類する例として使う(志望分野以外の科目も含む) |
題材文の構造 | パスカル自身の主張で、素直に読めばよい | 「命題」と「それを禁じた教会」の2層があり、読み違えやすい |
パスカルの分類では、幾何学も物理学も「理性と実験の側」にまとめて入りました。今年の第37命題で分けると、自明な前提から証明を積み上げる幾何学ははっきり条件を満たします。一方の物理学は、観測による実証で成り立つ学問で、どちらの側に置くかは読み方によって割れます。
昨年の過去問を「理性の学問は確実」という覚え方で済ませていると、今年の設問1で物理学を迷わず証明の側に入れてしまい、採点者の読みとずれるおそれがあります。条件を満たすかどうかは確実性の問題で、科学かどうかの問題ではない、と切り分けて書ける受験生が有利です。
2年分の題材は、思想史の上でつながっています。パスカルの「権威は無益で、理性のみが知る資格を持つ」という立場は、第37命題と同じ流れにある考え方です。13世紀に誤りとして禁じられた考え方が、17世紀には科学が進歩する原理として語られました。この流れを知っていると、今年の設問3で「この主張が禁じられたこと自体が、学問の自由にとって何を意味するか」まで踏み込めます。
設問2で求められる内容も上がりました。昨年は分類とその理由を書けば答えになりましたが、今年は志望分野の検証方法(実験、統計、フィールドワーク、史料批判など)を具体的に示す必要があります。
志望理由の試験は、この3年で次のように変わってきました。
年度 | 形式 | テーマ |
|---|---|---|
2025年度 | 出願時に提出する志望理由書 | 今までの経験と将来の夢をつなぐ場としてSILSを選んだ理由 |
2026年度 サンプル問題 | 当日30分のエッセイ | J.S.ミルの大学論(教養と専門) |
2026年度 本番 | 当日30分のエッセイ | パスカル『真空論序言』(権威の学問と理性の学問) |
2027年度 本番 | 当日30分のエッセイ | 1277年パリの禁令・第37命題(知の確実性と学問の方法) |
個人の話から学問の話への切り替えは、2026年度の本番で起きています。本番は、事前に公開されたサンプル問題(ミル)よりも抽象的でした。出題前には「国際社会の課題を交えた志望理由になる」という予想もネット上にありましたが、実際の出題は学術的な方向に進みました。時事問題に引きつけた志望理由を準備する対策は、もう当たらない可能性が高いと見ています。
2年分から見える出題方針
- 大問II(Essay 1)の英文は2年連続で「ユーモア」が題材。
言語・文化・人間性をユーモアから考えさせる出題が続いています。 - 英文は最新の学術誌・有力誌まで射程に入った。
1年以内の記事も出ます。 - 日本語エッセイは「学問の方法論」で固定化した。
ヨーロッパ思想史の一次資料(教員訳)を読ませ、知識の確かさの根拠を問い、最後に自分の意見を求める3問構成です。
ここから導ける結論は、日本語エッセイ対策に、志望理由のテンプレートを丸暗記することは、むしろ逆効果ということです。
当サイトの過去の解説記事でも「30分で書くために構成案(テンプレート)を作り込む」ことを勧めていましたが、2年分の出題を見た今は考えを改めています。準備すべきなのは文章ではなく、「自分の志望分野は、何をもって正しいと判断する学問なのか」を説明できる理解です。
合格者の志望理由書がどう組み立てられているかは、「志望理由書の合格例を学部系統別に紹介」で例文とともに確認できます。SILSの日本語エッセイは志望理由書そのものではありませんが、学んだことから問いを立て、大学での学びにつなげる骨格は共通です。
出典:2026年度問題は早稲田大学入学センター 2026年度 国際教養学部 入試問題、2027年度は問題冊子
今後の対策|今年の受験生・来年度受験生それぞれがやること
今年の受験生は、合格発表の11月23日を待つ間に一般選抜の準備を止めないでください。来年度の受験生は、高2のうちに英語スコアを固め、高3では「マーク問題で落とさない英語力」と「志望分野の研究方法を説明できる理解」の2本に絞って対策します。
今年の受験生:合格発表までにやること
自己採点で合否は読めません。配点が非公表で、書類審査と合わせた総合評価だからです。
発表までの4週間は、次の順に進めてください。
- 11月23日(月)10時にTAOで結果を確認する。キャンパスでの掲示はなく、不合格者への個別連絡もありません
- 合格した場合は、11月24日(火)〜12月8日(火)に入学手続料946,500円を振り込む。金融機関の窓口のみで、ATMとネットバンキングは使えません
- 不合格に備えて、一般選抜と併願校の準備を続ける
一般選抜に切り替える場合は、注意点が1つあります。SILSの一般選抜は大学入学共通テストの科目を使い、2027年度から始まる共通テスト利用入試も共通テストの成績で判定します。共通テストの出願は2026年10月2日で締め切られているため、出願していない人はSILSの一般選抜も共通テスト利用入試も受けられません。
共通テストの本試験は2027年1月16日・17日です。
併願先を検討するなら、英語で学ぶ学部の入試方式と日程を早めに確認してください。「上智FLA入試2027|全入試方式と二次募集・9月入学の倍率」と「ICU9月入学ELBAとは?2027年度の日程・倍率・要件」で解説しています。
リザプロの合格者にも、総合型選抜で上智大学に合格し、並行して準備を続けた一般入試で立教大学にも合格した人がいます。推薦と一般のどちらか一方に絞らず、時期ごとに優先順位を決めて両方を進めたことが、ダブル合格につながりました。(合格者インタビュー:上智大学 総合型選抜・立教大学 一般入試)
来年度受験生:Critical Writing対策(マーク問題が土台)
2年分の出題を見る限り、120分のうち大半はマーク式37問に使われます。エッセイの練習より先に、マーク問題を時間内に正確に解く力をつけるべきです。
リザプロが勧める時間配分は次のとおりです。
パート | 目安時間 | やること |
|---|---|---|
大問I | 20分 | 空所補充16問・誤文訂正4問。迷う設問は印をつけて先へ進む |
大問II | 45分 | 読解と選択問題に25分、Essay 1に20分 |
大問III | 45分 | 読解と選択問題に25分、Essay 2に20分 |
見直し | 10分 | 大問Iの保留問題とエッセイの文法ミス |
大問Iの対策は、文法問題集で「主語と動詞の一致」「時制」「分詞の態」「前置詞の組み合わせ」を繰り返すのが近道です。今年の誤文訂正のうち3問は、主語と動詞の一致・時制・分詞の態から1問ずつ出ています。
英語エッセイは、1本20分で「立場の明示、理由2つ、自分の経験1つ」を書き切る練習を重ねます。昨年の解答用紙は1本につき約20行の罫線でした。
来年度受験生:日本語エッセイ対策(志望分野の研究方法を言語化)
この試験で求められるのは、学問を切り分ける力、学問の特徴を理解する力、それを自分の言葉にする力、抽象的な概念を具体例に落とす力の4つです。
準備すべきなのは、志望理由の文章ではありません。やることは3つです。
準備 | 2026年度で使った設問 | 2027年度で使った設問 |
|---|---|---|
1. 高校3年間の学びの棚卸しと体系化 | 設問2(分類の理由) | 設問1(分類の例) |
2. それぞれの学問の特徴の理解 | 設問1・2・3 | 設問1・2・3 |
3. SILSで学びたいことの具体化 | 設問1(志望分野の位置づけ) | 設問2(志望分野の検証方法) |
1. 高校3年間で学んできたことの棚卸しと体系化
授業、探究学習、課題研究、独学で学んだことを、まず全部書き出します。
次に、それを学び方の種類でまとめ直します。「公式や定理を証明した(数学)」「実験で確かめた(物理・化学)」「史料を読み比べた(歴史)」「答えのない問いを話し合った(倫理)」といった分け方です。材料は学習内容で、部活動やボランティアは入れません。
2. それぞれの学問の特徴を理解する
体系化した学問ごとに、次の4点を2〜3行で言えるようにします。
- その分野は何を根拠に正しいとするか(史料、データ、実験、論理、解釈など)
- どうやって進歩するか(新しい史料、新しいデータ、反証、新しい解釈など)
- どこに限界があるか(再現できない、価値判断が入る、など)
- 高校の授業で、それを実感した具体的な場面
これがあれば、どの年度の素材が出ても、学問を切り分けて自分の言葉で説明できます。
3. SILSで学びたいことを具体的にまとめておく
「国際協力を学びたい」のような抽象的なテーマでは、設問2に答えられません。「〇〇という問いを、△△という方法で調べたい」と、問いと研究方法の両方まで言える形にしておきます。
例えば「難民の受け入れ政策が地域社会に与える影響を、統計データと現地での聞き取り調査で調べたい」のように書けると、そのまま「この分野では証明ではなく実証で確かめる」という答案の柱になります。
最後に、準備した1〜3を当日の主題に絡める練習をします。
来年も同じ型が出る可能性が高いと考えます。2年分からの推測ですが、準備の方向は変えなくてよいはずです。
演習には、知識の根拠や学問の方法を扱った西洋の古典の短い一節を使い、「分類する、自分の分野に当てはめる、評価する」の3問を30分で解きます。素材の候補は、ベーコンのイドラ論、デカルト『方法序説』、ヒュームの帰納の問題、ポパーの反証可能性です。
指導の現場でよく見るNGは6つあります。
- 「SILSの〇〇クラスターで学びたい」と、従来型の志望理由から書き始める
- 部活動や課外活動のエピソードを使う
- 分類の結論だけを書き、理由(その学問の方法)を書かない
- 設問3で「どちらにも一理ある」で終わり、立場を決めない
- 物理学や歴史学のように解釈が割れる学問を、設問1の例として断定的に分類する
- 条件を満たさない学問を「科学ではない」「確かではない学問」と書いてしまう
高1〜高3の時期別スケジュール
時期 | 英語スコア | Critical Writing | 日本語エッセイ |
|---|---|---|---|
高1 | 英検2級〜準1級 | 英字ニュースを週3本読む | 関心のある分野を2〜3つに絞る |
高2前半 | 英検準1級、TOEFL iBT 80〜90点 | 文法・語法問題集を1冊仕上げる | 志望分野の入門書を読む |
高2後半 | 英検1級、TOEFL iBT 100点、IELTS 7.0を目指す | 過去問の大問Iを時間を測って解く | 志望分野の研究方法を言語化する |
高3 4〜8月 | スコア確定。TOEFL・IELTSの直送手配 | 過去問を120分通しで解き、エッセイの添削を受ける | 過去2年分の設問で30分演習 |
高3 9〜10月 | 出願(9月上旬) | 本番形式の演習を週1回 | 初見の思想史資料で演習 |
準備の開始時期について、1つ事例を挙げます。リザプロで早稲田大学社会科学部と筑波大学国際総合学類に総合型選抜で合格した中山さんは、推薦対策を出願の1〜2か月前に始めて間に合いました。ただしそれは、書類の中身になる探究の実績が2年分すでにあったからです。(合格者インタビュー:早稲田社会科学部・筑波大学)
SILSは英語スコアの確定と、志望分野の研究方法の理解に時間がかかる入試です。短期間で間に合う例外を当てにせず、高2から動いてください。時期ごとの準備は「総合型選抜はいつから準備する?高1・高2からのスケジュール」と「高2のうちに大学受験の対策としてやるべきこと」で解説しています。
SILSの対策を自分の状況に合わせて組みたい方は、リザプロ公式LINEで無料の個別相談を受け付けています。
出典:2027年度 AO入学試験要項(国内選考)、2027年度入試以降の大学入学共通テスト利用入試導入について、令和9年度 大学入学共通テスト実施要項(文部科学省掲載)
まとめ
2027年度のSILS AO入試(国内選考)は、形式を変えずに中身を変えた年でした。
Critical Writingはマーク式37問と英語エッセイ2本で昨年と同じ構成のまま、英文素材が最新の学術誌まで広がりました。日本語エッセイは2年続けて学問の方法論を問い、分類の軸が「権威か理性か」から「自明な前提から証明できるか、それ以外か」に移っています。
今年の受験生は、11月23日の発表まで一般選抜と併願の準備を続けてください。来年度の受験生は、昨年と今年の2年分の過去問を、形式の練習ではなく「出題者が何を確かめたいか」を読む材料として使うのが最も効果的です。
リザプロの合格者の体験は合格者インタビューで読めます。SILSを含む総合型選抜の個別相談は、リザプロ公式LINEで受け付けています。
参考資料
早稲田SILS AO入試 よくある質問(FAQ)
Critical Writingの配点や合格最低点は公表されていますか?
公表されていません。大学は得点の開示も行わないと要項に明記しています。書類審査と筆記審査は、どちらかに重きを置かず総合的に評価されます。
自己採点で合否はわかりますか?
わかりません。配点が非公表で、調査書やApplication Formと合わせた総合評価だからです。発表まで一般選抜の準備を続けてください。
公式の問題や解答はいつ公開されますか?
問題は試験から数か月後、早稲田大学入学センターのWebサイトに著作権の許諾が得られた部分のみ掲載されます。昨年度分は2026年1月20日の掲載でした。AO入試の解答例は公開されていません。
合格発表はいつ、どこで確認しますか?
2027年度は2026年11月23日(月)10時に、出願システム(TAO)上で発表されます。キャンパスでの掲示はなく、不合格者への個別連絡もありません。
英検準1級でも合格できますか?
出願はできます。英語スコアに点数の基準はありません。ただしCritical Writingは学術誌や英米の有力紙・誌をもとにした英文が出るため、リザプロは英検1級、TOEFL iBT 100点、IELTS 7.0を目安にすることを勧めています。
海外経験がなくても合格できますか?
できます。国内選考の出願資格は日本の高校の卒業(見込)で、海外経験は求められていません。2026年度から活動の記述も廃止され、筆記審査で考える力を示せるかが中心になっています。
調査書(評定)はどれくらい見られますか?
2027年度から提出が必須になりましたが、評定の基準は公表されていません。成績段階別人数の記載が求められているため、学校での成績も評価の材料になります。


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